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それは、古典の授業中。
「う、うわアアァァァッッッ!!!!!」
うたた寝をしていると、友人の叫び声で目が覚めた。
「何?」
「あいつどうした?」
「西田さん、どうしました?」
「せ、せんせい、」
教師の声に西田は、片手を上げることで答えた。肘から下が赤くドロリとしたゲル状になっている片手を。
それはまるで、手が内包している血液が全て表に出たような、トマトケチャップを中途半端に固めたような、そんな印象を与えられるものだった。簡潔に言うととてもグロい。
「きゃあああっ!!!」
「ぎゃあああああああっっっ!!!!」
次々とクラスメイトの口からも悲鳴が聞こえる。たしかにグロいけどそこまで叫ぶのはそれはそれで可哀想だろ。どうせ何かのジョークだよ、と宥めようとしたが、そういうわけではなかった。
「私の手が……こんな………」
「俺は足がっ………!!」
クラスメイト達の体も続々と赤いゲルに染まっていく。隣の女子の指が急にプクリと膨らみ、そしてあっという間に右手が3倍位の太さになったかと思ったら、ぷちゅ、と嫌な音を立てて破裂し、ゲル状の真っ赤な液体と化したのが間近に見えた。
叫び声で埋まる教室。他のクラスからも悲鳴が聞こえてくるから、きっと同じことが起こっているんだろう。
「ぎゃあああああああっっっ!!!!」
ひときわ大きい叫びが上がって、なんだなんだとそちらを向いたら、薄い被膜で覆われているのか丸く成形された、生徒のような大きさのゲルが椅子の上で揺れている。
全身ゲルに変化してしまったらしいその子はまるで、いや。その姿はトマトだった。
先生の肩もトマトに変わっていく。あっという間にトマトに体が侵略されていき、そして後に残ったのは大きな丸い形のぷよぷよした物体だった。
脱皮するような、ズルリとした気持ち悪い感覚が指を走った。
見ると、俺の指も赤く膨れていた。
「まじか。」
きっと俺もあのトマト型の物体になるんだろう。もうみんなを見て諦めはついている。膨れていく腕先を見て、破裂させたらどうなるんだろうと考えてみて、筆箱の中にあったカッターナイフで腕を思い切り刺してみた。
ぱんっ!!
破裂音がした。中途半端に赤いドロッとした液体が流れ落ちた。口元についたについたそれは、
「トマトだ。」
ケチャップの味がした。
そうして俺はトマトとなった。
トマトはやがて全世界を包み、そして全人類はトマト化したらしい。
要は、地球からの反撃である。温暖化や環境破壊、動物虐待など様々な愚行を積み重ねた結果、人類は地球に害ある物として処分されたのだ。トマトは地球に選ばれた処刑者。
そして今、全ての人類は等しくトマトとなった。
トマトは全てにおいて平等である。
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