化け物と春の嘘

8/10
前へ
/10ページ
次へ
 子どもたちの後を追いながら、吸血鬼は朔のことを考える。 (――そして、君も、子どもなんだよ。朔)  理性的で、頭の回転が速く、大人びていて、とても中学生だとは思えない。  しかし、それでも、まぎれもなく子どもなのだ。大人の庇護下(ひごか)で、優しく、温かく見守られるべき、成長途中の存在。  家で厄介者扱いされている彼女は、子どものままではいられなかったのかもしれない。早く大人にならなければ、心がもたなかったのかもしれない。  けれど、もし、家族のほかに、親のように彼女を見守れる存在がいるのなら。 (あの子ももう少し、子どもらしくいられるのかもしれない……)  小学生の少女の後姿に朔を重ねながら、吸血鬼は小走りで近寄った。  そして――。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加