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住宅街にある寂れた公園には、化け物が出るという噂があった。
その化け物は、貢物を捧げると、一つだけ、願いを叶えてくれるという。
その正体は、泣く子も黙る吸血鬼――ではなく、警察に捕まるのが怖くて人を襲えない吸血鬼であった。
青い目を持ち、長い金髪を一つに結わえた彼は、黒いマントを羽織っている以外、普通の高校生のように見える。しかし、実際は、その特殊な力で、相談に訪れた美貌の中学生――朔のことを幾度となく助けてくれたのである。
両親と折り合いが悪く家に居場所がない彼女は、そんな吸血鬼によく懐いた。だから、今日もまた、この公園を訪れているのは別に不思議なことではない。
しかし、どうも様子がおかしい。
彼女は公園に来るや否や、ベンチに寝そべっていた吸血鬼の大事なマントを無理やり引き剥がしたのである。
呆気にとられた彼が見つめていると、彼女はマントを片付けてから、驚くべき発言をした。
「吸血鬼さん。――本当は、吸血鬼ってこと、嘘ですよね?」
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