恋も仕事も奪われた私ですが、お忍び社長に愛されています

　私と同い年である彼女は、私たちの企画営業チームに配属された。ふんわりとした髪型で色白小柄な彼女は可愛らしく、前の職場でも営業をしていただけあり、はつらつとした明るい女性だった。

　「私、営業には自信があるんですけど、元々飲料メーカーの営業職だったのでPRの企画はしたことがないんですよ」

　彼女の訴えに、企画営業チームリーダーである岡島さんが考えたことは私とペアを組ませることだった。

「吉平(よしひら)は企画力があるから、学ぶことも多いと思うよ」

　信頼を込めた目で岡島さんが私を見つめるからくすぐったい気持ちになる。私は信頼に応えるべく

「わかりました。よろしくお願いします、小久保さん」
「わーっ、吉平さんが担当されたイベントすごいなって思ってたんですよ！　よろしくお願いしますねぇ！」

　人懐っこい笑顔は無邪気で可愛らしく、私も頼られて悪い気はしなかった。

「なずな、悪いな。ただでさえ仕事が多いのに頼んじゃって」

　ミーティングが終わり、会議室から出たところで岡島さんに小声で話しかけられる。

「小久保さんはコミュニケーション力がすごいと伺いましたし、私も学ぶことは多そうです」
「俺が一番頼れるのはなずなだからさ。本当にありがとうな」

　岡島さんは私の背中を優しく叩くと、喫煙室に向かった。その背中を見つめながら、岡島さんの役に立てることなら嬉しいと思う。

　岡島さんは三十二歳。一年前からひっそりお付き合いを始めた。
　新卒入社して以来ずっと同じ部署。爽やかで優しく頼りがいのある彼に入社当時からずっと憧れていた。そんな彼が地味な私に告白をしてくれるだなんて。今でも夢のようだと思う。

　小久保さんの件は教えることも多いけど、学ぶことも多いはずだ。頑張ろう。

　そう思っていたのだけど……