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旧友と家族のゴールデンウィーク。
「そこで何してるの?」
俺とにしのを視界に映したかと思えば、叶君は感情の無い声でそう言った。
いつもの優しそうに笑っている叶君と同じだとは思えないくらい冷たい目をしている。
俺はそんな叶君を見て思わず声が出なくなってしまった。
「……6時から夕食らしいから、僕は先に行くよ。」
数秒間無言の時間が続いたかと思うと、叶君は俺達に背を向けて自分の部屋の方に向かっていった。
そこで俺はハッとしてにしのの腕から抜け出そうとした。にしのはそんな俺を止める気は無いらしく、あっさり俺を離した。
俺は恥ずかしさとこれからどうしようという気持ちで一杯で、さっさとこの場から離れようと走り出した。
「…聖さん。」
すると後ろからにしのの声が聞こえてきた。先程のこともあって無視しようとも思ったのだが、にしのの声が何処か寂しそうで。俺は思わず足を止めてしまった。
「…何。」
ただ、正面から向き合うのはまだ流石に難しくて、俺はにしのに背中を向けたままの状態で返事をした。
「…すみません。でも、俺、ふざけてるわけじゃないですから。」
にしのは申し訳無さそうに、でもはっきりとそう言った。
ふざけてるわけじゃないならどういうつもりなんだ、と聞きたかったけど聞いたら何だか取り返しがつかなくなりそうで、俺はそう、とだけ言ってその場から立ち去った。
それから俺はダイニングに向かい、父さんたちと一緒に夕食を食べたけど、どんな話をしたのかはよく覚えていない。
ただ一つ覚えているのは、叶君がずっと俺と目を合わせてくれなかったということだけだった。
「どうしよ…。」
お風呂から上がって寝ようと思ったが夕方のことがずっと頭から離れず、俺は気分転換にバルコニーに来ていた。
なんとなくもう限界で、誰に向けたわけでもない言葉が自然と出てきてしまう。
にしのの距離が近いのは割といつものことだけど、今日のは明らかに変だった気がする。それに、叶君とは俺とにしのの件があってから気まずいし…。
ほんとにどうすれば良いんだろ…。
俺はモヤモヤした気持ちを抱えながら星を眺めていた。空は俺の気持ちとは真逆で雲一つ無く、星がよく見える。そういえば昔はよくここに星を見に来てたっけ。
………。
…ねぇ、聞こえてるかな?もし、君が俺なら、君はどうするの?……ねぇ、会いたいよ……。
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