旧友と家族のゴールデンウィーク。

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 公園の近くに行くとそんな声が聞こえてきた。一瞬俺達のことかとも思ったが「族潰し」だなんて呼ばれたことは一度も無いのでそれは無いな、と思い直した。しかもこちらも向こうも声なら聞こえるが、公園の周りにある塀に遮られて姿は見えないはずだ。なので気づかれようがない。  ならば一体誰が、と思い柊に顔を向けるが、柊は特に何も言うことはなくただ何処かへ歩いていっているだけだった。少し歩くと柊は立ち止まり、公園の中の方に目を向けた。柊が向かっていたのはどうやら風化によって塀が少し崩れているこの場所だったようだ。確かにこの場所なら公園内の様子が見やすい。  俺も柊に続いて公園内を見てみると、そこには街灯に照らされた数十人の男と、それに囲まれた一人の男がいるのがわかった。  なんだあれ。集団イジメか何かか?  そう思いながらもっとよく見てみようと目を凝らすと、囲まれているのはサラサラの黒髪にパッチリとした目をしたかなりの美少年だということがわかった。  特に見覚えはなく、これの何が面白いんだと思って柊を見てみるが、柊は特に反応せずただ男達の様子を見ているだけだった。  どういうことだ、と思いながら俺もまた視線を男達に向けると、真ん中に囲まれていた男が漸く口を開いた。 「…誰?お前ら。」  その男の声は思っていたより高いが、何故かどこかで聞いたことがあるような声だった。  どこで聞いたっけ?と思いながら記憶を探っていたが、誰かの大きな怒鳴り声の所為で思考が途切れてしまった。 「『誰?』だぁ?わからねぇ訳ねぇだろ!!こっちはお前に不意打ち食らったせいで仲間が一人病院送りにされたんだぞ!!」  不意打ち、仲間…。そして「族潰し」。何となく話が見えてきた気がするな。 「あぁ、なるほどね。あいつの仲間か。どおりで弱そうなヤツばっかりなわけだ。」  そんなことを考えている間に、何故か囲まれていた男は明らかに馬鹿にしているような口調で、自分を囲んでいる奴らを挑発した。  だが、そんな挑発にまんまと乗っかってしまった周りの男達を見て、俺は馬鹿だなぁ、と思った。 「ンだと!?不意打ちで勝っただけのくせして調子乗ってんじゃねぇよ!!」  明らかに囲まれてる奴のほうが強そうなのに、周りの奴らにはそれがわかっていないらしい。  だがまぁ一応喧嘩の行方は見守ってやることにした。  そんな心持ちで喧嘩の様子を眺めていたが、勝負はほぼ一瞬だった。 「へぇ…。」  隣りにいた柊が思わずそんな声を出してしまうほど、男は鮮やかに囲んでいた男達を倒していった。
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