同情?

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同情?

自分から振った、好きだの嘘じゃないだのと言う話題だったと言うのに、その空気にすぐに耐えられなくなってしまって、結局キヨシくんのことを中村さんに話すことにして話題を変えた。 「同伴先は、公園で花火なんですよ」 「なかなか珍しいパターンだな」 「この間は、一緒にタワレコ行って、私の好きなアーティストのアルバムを買ってもらいました」 「まあ、あんまりキャバ嬢が喜ぶようなこと、知らないんじゃないの」 「いえ、私はちゃんと嬉しいんですけど」 「うた、嬉しいのか、それってただのデートじゃないの」 「そう言うのが好きなんじゃないですか」 「あんまりキャバクラとか通い慣れてなさそうだしな、若いし」 「ただ、金銭的にキツそうだから、正直見ていられなくて…」 「うた、そういう気持ちは、あんまり持たなくていいよ」 「なんでですか?」 「仕事の邪魔になるし、相手の、客の自由だし。全部、客の勝手だろ」 仕事の邪魔になる。 「申し訳ない」「大変そうで可哀想」、そういう感情を持ってしまうと、その客に対しての接し方にムラが出る。 そうなるであろうと言うことはよくわかっていた。 現に私は、キヨシくんに申し訳ないと思っていて、無理をさせてしまっていると感じていて、そうまでして自分を想ってくれているのだから、と、徹底して来ていた「営業方法」から少しばかり外れた行為まで許してしまうことがあった。 とは言え些細なことではあった。
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