初恋

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初恋

私は、中村さんと寝た。 その間、ずっと気持ちが良かったし、ずっと楽しかった。 愉快、とか、面白い、の方の楽しいと言う感覚だった。 酔っぱらっていたからだろうか、とも思ったけれど、酔っぱらってこういう行為をしたことは今までだって何度かはあったはずだ。 それなのに、私ははじめて、この感じは今までと全然違う、なんて思ってしまったのだ。 嬉しいだとか、幸せだとか、愛してるだとか、そういうのはどうだって良かった。 そもそも、愛してる、は私にはわからない感情だったので、一番近いのはどれかと言われたら、まあ「幸せ」だったのではないだろうかと思う。 そうか、きっとそれだ。 私は多分、あの時とても幸な気分だったのだろう。 もしかしたら私は、恋みたいなことをして、その恋をした相手と、こうして寝るって言う、そんなことがしてみたかったのかもしれない。 普通の恋の、幸せなところだけを味わってみたかったのかもしれない。 例えそれがよくあることで、ただの俗っぽい、どこでも行われているような、誰でもやっているような、沢山の人が既に知っているような、それらの行為と何一つ変わらない、そういう類のものの中の、たった一つにしか過ぎないとしても。 その時は、彼だけは特別なのだと思った。 今までの、他の誰とも違うのだと思った。 好きな人とするのって、こんなに気持ちがいいんだ。 そう思って、またいつか彼とこういうことがしたいな、と思った。 あんなにどうでも良い行為だと思っていたのに。 私はそれはもうあっさりと手のひらを返した。 なんだ、私はただ、今まで誰のことも好きじゃなかっただけなんだ。 そんな風に、単純に答えを出した。 つまりは、マネージャー、中村さんは、私の初恋のひとと言うこと。 そりゃあ、浮かれまくるに決まってる。 手がつけられない、大馬鹿者みたいに、ね。
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