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No2
私だってそうなのだ。
参考になる意見はとてもありがたいけれど、結局それを聞くのか、聞いた上でどのような結果を出すのか、選ぶのは自分でしかない。
ならば、ミサの人生に私が口を出すのはやめようと思った。
とても好きな人と共に暮らしていて、幸せそうなミサの話を聞いていたら、それで良いような気がしてしまった。
もちろん痛い目にだって合うだろう。
私だってそうだ。
そうやって大人と言うやつになって行くのだろうか、と、そんなようなことを漠然と考えていた。
「次、うたこさん、どうぞ」
「…あ!はい!」
ぼんやりとしてしまっていた。
一人のキャストのお姉さんが部長の元から席へ戻って歩いているところで、皆がパラパラと拍手をしていた。
多分、No5位までに入ったキャストのお姉さんなのだろう。
私の名前がそこでやっと呼ばれたと言うことは、それは、一応はNo上位には入っていると言うことだ。
ミサが、ニコリと私の視線に気づいて微笑みかけてくれる。
そんなミサの曇りのない笑顔に、困惑気味に笑顔を返してから、緊張しつつ立ち上がると前へと出る。
ミサが微笑んでくれた理由は、すぐにわかった。
ミサは知っていたのだろう、きっと私の頑張りを、ミサも見ていてくれたのだろう。
感じていたのだろう、と思った。
「うたこさん、No2です。おめでとうございます」
「…え?」
「頑張りましたね、こちらがお給料で、こちらは店からの特別手当です」
「特別手当、ですか?」
「お祝い分、と言うことですね」
「あ、…ありがとう、ございます!」
部長の口角が少しだけ上がる。
私に向かって笑顔を作ってくれているのがわかった。
パラパラとNo3だったキャストのお姉さんが呼ばれた時のように、適当な拍手が店内に響く。
私は、初めてNo上位入りを果たした。
しかも、No2だ。
この店で。
はじめて働いたキャバクラと呼ばれる夜職の店で。
それなりにキャストの人数の多い、そんなこの店で。
…嘘、じゃないの?
本当、なの?
誰か、嘘じゃないって言って。
信じられないよ。
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