見てくれてる

1/1
前へ
/66ページ
次へ

見てくれてる

私はいつも、ミサのようになりたかった。 認めて欲しかった。 この、キャバ嬢と言う職種には、目に見える、わかりやすい「No」と言うものがあった。 その上位に、私は入れた。 私はやっと、私自身のことを「価値がある」のかもしれない、と思えた。 それが例え、幼くてメンヘラでバカだった、浅はかな、若い頃の私のただの勘違いだったとしても。 「嘘じゃない、本当のことだ、うたこ」 マネージャーが繰り返し言う。 「嘘じゃない」と。 私に向かって、宥めるように、本当のことだと信じても良いのだと。 ちゃんと自分のことを認めても良い、自分はおまえのことを認めているから大丈夫だと、まるでそう言ってくれているようだった。 私はようやっと、これが私が頑張って来た結果であって、現実の出来事であって、私はそれを誇っても良いのだ、喜んでも良いのだ、と理解することが出来た。 「嘘じゃ、ないの?」 「嘘じゃない」 「そっか、嘘じゃないんですね、本当に私、No2に、なったんだあ…」 「そうだ、おまえはこの店のNo2だ。嘘じゃない、頑張ったな」 「はい…私、頑張った、んです」 「知ってるよ。見てたからな、ちゃんと」 マネージャーは、自分の煙草がフィルターの部分まで燃え尽きてしまっても、私の頭にのせた手のひらをどけることはなかった。 私が、俯いてしまった顔をあげるまで、そうしていてくれた。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加