私のオトコ?

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私のオトコ?

幾らも何もない、私は店を辞めるつもりはないし、嫌なのに生活費の為に無理をして働いていると言うわけでもなかった。 今思えばこの時の私は、多分、Noと言う数字で分かりやすく自分の働きが評価され、スタッフたちからの接し方からもそれを感じられる、自分の価値を認めやすい仕事だったから、このキャバクラで働いていたのではないかと思う。 「俺はうたこに、店を辞めて欲しい」 「そうなんですか?うーん、困ります、それは」 「まだ、彼氏じゃないのに、こんなことを言うのもおかしいが」 「そうですね、木村さんが彼氏だったら、彼氏がそう望めば、私はお店を辞めるかもしれないですね」 「そうか、わかった、俺はうたこの男になれるようにする」 「無理をしなくていいんですよ、木村さん」 「大丈夫だ、俺には自信がある」 木村さんが面倒な客になってしまった、と思うと少しばかり残念だった。 一人、気楽に同伴することが出来て、会話と酒だけを楽しめば良かっただけの客が減ってしまった、その事実がのしかかって来る。 最悪、木村さんは、私のことを諦めて店に来なくなっても構わないか、と考え、わざわざ色恋営業をかけることはしないでおこうと決めた。 この時は、それでも良かったから。 「じゃあ、期待していますね」 微笑んでそう答えると、木村さんに、今まで入れてもらった中で一番高いシャンパンを、自分であけたいかどうかを訊ねる。 自分がやる、と言うので新しいシャンパングラスを二つと、おしぼりをボーイに頼み、木村さんがシャンパンをワインクーラーから持ち上げるのを、キャッキャとはしゃぎながら小さく手を叩いて嬉しそうに見えるよう振る舞った。
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