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は?
しまった、と思った。
私はいつの間にかすっかり眠ってしまっていたようだった。
硬い床に思いっきりぶつけてしまった膝とお尻の骨が痛む。
痣になってしまっただろうか、まあいいけれど、どうせ私は短いドレスは着ないのだから。
顔を上げて、ビップルームの端っこの方へと転がっている化粧ポーチを拾う為に、体を起こす。
まだ頭がフワフワとしていて、あんまり色んなことが考えられない。
床を進むにはテーブルがあって無理なので、ズリズリとソファの上へと体全体を移動させると、化粧ポーチに届く位置まで匍匐前進で辿り着く。
腕をめいいっぱい伸ばして、なんとか持ち手の部分を掴むと引き寄せた。
手元にやって来た化粧ポーチを開けて、小さな鏡を取り出すと顔を見てみる。
化粧はあまり崩れていなかったが、頬はリンゴのように真っ赤だった。
そのまんま、力尽きてうつ伏せのままソファにペタリと額と鼻の頭をくっつけた。
「起きてるか、うたこ」
「…」
「起きろ、ほら、ミサも帰ったから」
「…ミサ、いないんですか、もう」
「彼氏が迎えに来るって言って、帰ったよ」
「…そうなんだ」
ミサの彼氏、ユウくんは他のオンナと寝たけれど、どうやら本当にミサが本命で合っていた、と言うことがわかって、ちょっと安心する。
良かったよ、私が言ったことが間違えてなくて、…だよね?
私の想像で話したことが間違えていて、ミサのことをぬか喜びさせただけだったり、勘違いさせてもっと貢がせたりする羽目にはならなかったようだ。
後でラインして、2人の様子を聞いてみようか。
「うたこは今日どうする」
「何がですか?」
「家に帰るか、どっかで俺のこと待ってるか」
「は?」
突っ伏していた顔を上げて、私のすぐ横にしゃがんでいたマネージャーの顔を見る。
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