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しょうがない
マネージャーは少し俯いて、私と視線を合わせてくれたので、ああいいんだ、と思って、そのあんまり柔らかくなくて、ゴツゴツとしている太ももの上に肩まで乗り上げる。
私はニヤけているに違いない、きっとだらしのない顔をしていると思う。
でも嬉しくて、面白くて、楽しくて、そんな顔しか作れそうもなかった。
「うたはしょうがないなあ」
「しょうがない、ってなんなんですか」
「しょうがないは、仕方ない、ってことだろ」
「そんなこと、言わないで」
「店にいる時と、全然違うんだな、おまえは」
「そうですか?」
マネージャーが、私のことをうた、と呼んだ。
じゃあ、マネージャーはもう、今から中村さんだ。
私のことを、しょうがないと言う、中村さんは別に困ってはいなさそうだったので、安心する。
実はとてつもなく酔っぱらっていて、ただの色ボケ野郎な私は、中村さんの腰に腕を回してお腹に顔を埋めた。
あったかくって、ペッタンコなお腹だった。
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