困った客

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困った客

だからいつもと変わらない。 仕事をしなければ。 スマホを握って、おはようございますのラインを文章を色々と弄って、絵文字で飾り付けては作成して、次々に送る。 シャワーの音に混じって、沢田知可子の「会いたい」のメロディーだけが聴こえて来る。 私はもうすっかり自分の物になったような気でいる、黒猫柄のマグカップから焼酎を飲みながら、歌詞をつけて歌う。 今日同伴する予定になっていたのは、ちょっと大変だけれども、ガチ恋の20歳だと言う新聞屋さんで働いている青年だった。 お金を沢山使うことは出来ないが、それでも私に会う為に一生懸命店へと通ってくれていた。 一体どうしたものだろう、と私を悩ませる指名客の一人でもあった。 中村さんに相談してみようか、と思うけれど、若い客一人自分でなんとか出来ないのかと思われてしまうのもなんだか癪だった。 私はこの客、キヨシくんが、かなりの無理をして店になんとか来店している、と言う状況を知っていたし、見ていると心苦しいので、出来れば諦めてもらえたら良いのだけれど、と考えていた。
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