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ナギサさん
うん、そんな感じがいい、だってきっとそれならきっとすぐに忘れられるから。
「今日週末だから忙しいだろうし、もうNo上位入りしてからずっとうたは結構店で飲んでるだろ、結局送りはどうする?」
「そうなんですよ、迷ってます、どうせ毎日飲み過ぎて送りの車に間に合わないし、断ろうかなって」
「だよな、始発まで店にいられたらいてもいいけど、暇だろ」
「中村さんが一緒ならそれでもいいんですけど、毎日そういうわけじゃないですよね」
「そうだなあ、部長が残って店閉める場合もあるからな」
「適当に朝まで遊んでてもいいんですけど、ミサは最近は彼氏が家で待ってるから帰るしなあ」
「ナギサは始発まで新宿で遊んでるみたいだけど」
「ナギサさんですか?私、場内でたまにつけて頂く以外、あまり個人的に仲良くしたことなくて」
「ざっくばらんな感じでイイコだよ、話しやすいと思うし、おまえやミサみたいに酒でよく潰れてるけど」
「ふふふ、よくビップルームでご一緒しますね」
ナギサさんと言うキャストのお姉さんがいる。
私と年は離れていて、確か26だか27だと教えてくれたと記憶している。
ミサのようにいつもではないが、No上位に入っていることもたまにあり、沢山ボトルを入れてくれる指名客が来た際はよく私に場内指名をくれて、一緒に飲むことがあった。
見た目は、細くて背の高いモデル体型のミサや、背が小さくて細いだけの私とは違って、160くらいだろうか、体系もどちらかと言うとふくよかで、大きくて形の良い胸やお尻を強調するようなドレスを選んで着ている。
暗めの栗色に染めた髪を胸下あたりでくるくると巻いていて、顔立ちはどことなく南米系のハーフっぽい印象の、明るいキャストのお姉さんだった。
「今度、ミサと一緒じゃない時にでも喋ってみたら」
「そうですね、多分ナギサさんはミサのこと苦手ですよね」
「ミサは誤解されやすいからな」
「じゃあ、機会があったらナギサさんに話しかけてみます、…中村さんが一緒に帰ってくれない日とかね」
「毎回タクシー使ってたら、金もったいないだろ、おまえだって」
「でもここ、店から近くないですか?」
「そうだな、二千円くらいだし、二人で割れば大したことないけどな」
「そうだ、駅までの道、教えて下さい。今日は電車で行こうと思って」
そうか、と言うと、中村さんがパソコンの画面にこの近辺のマップを検索して出して、駅までの道筋と、歩いてどのくらいかかるか、駅を何時に出れば新宿に上手いこと着くのか、なんてことを説明してくれた。
まずはヘアメをやる為に18時半には店に行く予定だったので、余裕を持って17時過ぎには中村さんの部屋を出られるようにしよう、と決める。
そして、タイミング良くキッチンのある方から洗濯機が、洗濯物が干せる状態になったと言うことを知らせる高い音を響かせた。
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