公園同伴

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公園同伴

日本酒とピンクの花束のお礼と共に、『今日は連絡がなくて寂しかったです、きっとお仕事を頑張っているのだと思いますけれど、無理をして体を壊したりしないように気をつけて下さいね、木村さんのことを心配する人がここにいるんですからね』と、そんな風に普段より少しばかり色をつけて。 そして、ヘアメさんのお陰で私の髪型が整えられ、指名客やフリー客への営業ラインを送り終わって、それからしばらくマネージャーのことを待っていた。けれど、結局マネージャーはヘアメの部屋へは訪れなかった。 鍵、どうすれば良いのだろう、と思って『時間がないのでもう行きます。鍵はどうすればいいですか?』と、一応ラインを送っておいた。 それから私はすぐに店を出て、西武新宿線の方の駅へ向かって電車に乗った。 同伴するキヨシくんとの待ち合わせをしている駅は、中野区と言っても中野駅の方ではなくて西武新宿線の方の駅で行ける場所だったからだ。 キヨシくんと22時までに店に入るとして、木村さんは一体何時に訪れるのだろうか。 22前に来られても私は店にはいないかもしれないし、出来れば22時くらいか、それを過ぎた頃に来店してもらえるとありがたい。 そんなことを考えていたら、目的の駅へはすぐに着いてしまう。 さて、公園で花火をすると言っていたけれど、今の私の姿は花火向きとは到底言えない。 浴衣でも着て来たのならばキヨシくんを喜ばせることが出来たのだろうが、金をそんなに沢山店に落とすことが出来ない彼にはそこまでのサービスは必要ないだろう。 わかっているのに、せっかくの花火デートなのになんだかキャバ嬢感丸出しな見た目で申し訳ないな、って気持ちになっちゃうのは、何でなの。 ー いけない、キヨシくんは、お客さんなんだから。
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