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抱きしめた後に乙葉の手が果穂の胸に触れると…
〈ドクン ドクン ドクン〉
確かに強い鼓動を感じ、乙葉に笑顔を見られた。
「美知歌…。おかえりなさい…。」と言って、果穂の胸から手を離し、今度は乙葉の片耳を当てた。
〈ドクン ドクン ドクン〉
「聞こえる…。響輝、本当に聞こえるわ。」
「美知歌…。本当にありがとう、果穂ちゃん。」と近くにいた響輝も果穂に向けて微笑んでいた。
そんなやり取りをやっている時に果穂が気づいてしまった。
「お、お兄ちゃん!?」と言って、司が号泣していたのに果穂が気づく。
そんな司が椅子から立ち上がり、乙葉と響輝の方へ視線を向く。
「乙葉さん、響輝。」
「「……」」
「今更ですが、美知歌ちゃんが亡くなった辛さと悲しさは身に沁みて感じます。
俺も10年前に果穂が果穂を亡くしたかと思うと…とてもじゃないけど考えられません。
乙葉さんの臓器提供の決断と美知歌ちゃんの心臓で…今の果穂の存在があるんです。
果穂の未来へと歩かせてくれて、ありがとうございます!」
「お兄ちゃん…。」
男泣きをしながら勢いよくお辞儀をする姿に乙葉は微笑みながらも「司君…良いお兄さんになったのね。こちらこそありがとう。」とお礼を言った。
お話が終わった後にみんなで二人の仏壇の前でお線香を立て、合掌をした。
仏壇の写真には美知歌とその父親がにこやかに写っていた。
帰りの際には乙葉から
「いつかピアノ演奏を聞かせてね」
「勿論ですよ。響輝お兄ちゃん、その時に一緒に良いかな?」
「ああ、宜しくな」と約束した。
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