自由のない世界

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ニコニコは食糧を両親の元に持って行った。 両親は既に死んでいた。 「なんて事……うぅ……」 ケンノエは静かに泣く。 「悲しいの?」 ニコニコが聞く。 「悲しいよ。君は悲しくないの?」 「悲しいと言う感情がいつのまにか無くなっちゃった。だからだから泣けない」 ニコニコは両親が死んでもなお無表情だった。 (あの無邪気な少女がこんな人間に…。この国の人は子供でも悪魔に見える…!) ケンノエはそう思った。 「逃げよう!」 ケンノエは言った。 「え?」 「逃げよう、君はここにいてはいけない!」 ケンノエはニコニコに腕を掴んで言った。 「逃げられないよ。見張りがいて逃げられないんだ」 ニコニコは首を垂れる。 周囲は電流入りの鉄条網が張り巡らされていて逃げる事が出来ないようになっている。 そしてそして逃げようとしただけで逮捕され強制収容所に入れられる。 シャンティの実状が他の国にバレると大変都合が悪いからだ。 「参ったな…」 ケンノエが困っているとある人物がケンノエの前に現れた。 「逃げられますよ」 そしてこう言った。 「貴方は?」 「私はこう言う者です」 男は名刺を差し出した。 そこには広瀬友郎(ひろせともろう)と書かれていた。
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