第1章

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「俺、で良いですよ。この車、長く任せてもらえるのだったら、楽にお付き合いしましょう」 成世をリラックスさせようと、大和はにっこり笑ってみせた。顧客とはフランクに付き合うのが信条だ。何事も、導入から良い雰囲気に持ち込めば、上手く事が捗ることが多い。 「あ、はい!ありがとうございます!平子さん、ぜひ末永くよろしくお願いします!!」 「ハハッ!末永くってー。そんなに畏まらなくっても」 恐縮した様子で、ペコリと頭を下げる成世。どうやったら肩の力が抜けるかな。上げた顔は緊張のためか上気していて、挙動不審にクルクル動く丸い瞳が小動物を思わせる。 「三ヶ島さんて、動物園でも似合いそうだな」 「えっ?」 「いや、失礼なこと言ってたらごめんなさい。ふれあい動物パークみたいなところに居てもしっくりくるなって思って」 「そう見えますか?うん。俺、生き物全般好きなんで、それもアリかな」 突拍子もないことを口にした大和に対して、嫌な顔を見せることなく成世は答えた。口調も少し柔らかくなってきた気がする。
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