第1章

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「じゃ、なんで水族館?」 「俺、競泳やってたんですよ」 「スイマー?意外だな」 「意外ですか?」 「いやだって、そんな可愛らしいのに……って、ごめん、気に障ったら」 力を抜いてもらおうと軽口を挟んだつもりだったが、今どきどこがハラスメントと捉えられるかわからない。慌てて大和は謝罪の言葉を口にした。 「あははっ、スイマーって言っても、そんなあからさまな逆三角形とかじゃないですよ?」 大和の心配をよそに、成世はカラカラと笑った。気にしてないみたいで良かった。しかし、この笑顔も可愛らしいな。水族館ではさぞかし人気者なのだろう。 「もし逆三角形だったとしても、水族館じゃ披露できないよね」 「そりゃそうですね」 完全に談笑の形になった。ホッとした大和は、そろそろ仕事に取り掛かるかと腰を上げる。 「平子さんって職人さんっぽくないですね」 「そう?」 「めっちゃフレンドリー。初対面でこんなに雑談させてくれる人、初めてですよ」 「それはありがとう。ぜひ末永くよろしく」 「あははっ、パクられたー」 成世はまたカラカラと笑った。話のテンポが合う。これはうまくやれそうだ。 「じゃ、車に道具取りに行って来ます」 「はい、よろしくお願いします!何かあったら、名刺の番号に連絡してください」 社用の携帯かな。ま、それでも良いか。何が良いんだか、と苦笑しながら、大和は自分の乗ってきた作業車に向かった。
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