7人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃ、なんで水族館?」
「俺、競泳やってたんですよ」
「スイマー?意外だな」
「意外ですか?」
「いやだって、そんな可愛らしいのに……って、ごめん、気に障ったら」
力を抜いてもらおうと軽口を挟んだつもりだったが、今どきどこがハラスメントと捉えられるかわからない。慌てて大和は謝罪の言葉を口にした。
「あははっ、スイマーって言っても、そんなあからさまな逆三角形とかじゃないですよ?」
大和の心配をよそに、成世はカラカラと笑った。気にしてないみたいで良かった。しかし、この笑顔も可愛らしいな。水族館ではさぞかし人気者なのだろう。
「もし逆三角形だったとしても、水族館じゃ披露できないよね」
「そりゃそうですね」
完全に談笑の形になった。ホッとした大和は、そろそろ仕事に取り掛かるかと腰を上げる。
「平子さんって職人さんっぽくないですね」
「そう?」
「めっちゃフレンドリー。初対面でこんなに雑談させてくれる人、初めてですよ」
「それはありがとう。ぜひ末永くよろしく」
「あははっ、パクられたー」
成世はまたカラカラと笑った。話のテンポが合う。これはうまくやれそうだ。
「じゃ、車に道具取りに行って来ます」
「はい、よろしくお願いします!何かあったら、名刺の番号に連絡してください」
社用の携帯かな。ま、それでも良いか。何が良いんだか、と苦笑しながら、大和は自分の乗ってきた作業車に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!