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『ロハスクラブ・ガレージ』と掠れた紺色の文字でカタカナ表記された白い木製の看板には、『車のなんでも屋さん』と添え書きがしてある。南国を思わせるグリーンが、入口とカウンター周りを彩り、ロハス柄のタペストリーのそばには、すっかり使われることのなくなったサーフボードが飾ってある。天井ではシーリングファンがゆるゆると回り、そのリズムに合わせるかのように、BGMとしてハワイアンミュージックが流れている。一見まるでカフェのようだが、奥にはちゃんとした車両整備の設備が構えてあった。
いざ自分の工場を持つとなった時、大和は内装について相当悩んだ。親しみやすさという点で、あまりメカメカしいものにしたくなかったのだ。思案の末、サーファーを気取っていたころ好きだった南国風にしようと思い立った。陸を走る車と、海を走るサーフボードではあまりにも正反対すぎると、完成後に苦笑したのだが、それもご愛嬌だ。
そういえば、と大和は思い出した。スイマーだって言ってたな。だったらあの時、自分もサーファーだったと言えば良かった。いや、元だから、言ったところで話が続かないか。昼間の成世との初顔合わせを思い出しながら、整備スペースのさらに奥へと向かう引き戸に向かった。
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