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「お待たせー」
「おお、美味そう」
良い色に焼かれた大ぶりの海老に、サラッとしたつけダレをつけ、頬張る。海鮮に合うこのタレは、大将の秘伝レシピらしい。目の前の前職時代の同僚が、同じように海老を咀嚼しながら、感心したように呟いた。
「ここ、本当に美味いな」
「だろ?美味すぎてあんまり人に言いたくないんだって」
「わかるわー。てか、そんな特別な店に俺なんかを連れてきてくれて良かったのかよ」
「お前には世話になったからな」
事情があって、急に退職することになった大和の引き継ぎを丸ごと引き受けてくれたのが、この男だった。恩義は忘れない質だ。
「で、どうよ?仕事の方は?」
「んーまぁ、ぼちぼちだな。自営業って余計な仕事も多くてさ」
「だろうな。急だったもんな。何かあったのか?」
「……いや、たまたま良い場所を勧められたから始めたってだけだって」
「ふーん」
大和は一瞬言い淀んだ。そこにたまたま場所があったから独立したというのは、建前も良いところだ。しかし、この元同僚にそれを説明するわけにはいかない。たとえどんなに「世話になった」相手だとしても、だ。
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