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「な?お前が適任だったろ?」
手元から顔を上げた大将が、モヤっとした空気を吹き飛ばすみたいに、成世に微笑んだ。
「えっと……これで大丈夫でしたかね」
「上等上等。ほら、そしたら何て言うの?」
「……え、あっ……MC!ですよね?」
「よくできました。お疲れさん」
そんな上司と部下のやり取りを、大和は口を開かずに見守っていた。大将が再び串に集中すると、勢い付けのためなのか、大和は一気にグラスを干した。
「……びっくりしたよ」
大和の第一声は、予想通りだった。というか、それ以外にないだろう。
「俺も。それから、ちょっと怖くもあるよ」
「怖い?」
「だって、こんな都合良く組織の同僚が自然につるんでるなんてさ。絶対何か仕組まれてると思わない?」
「……それもそうだな」
それは成世が、夏帆と知り合った頃から感じていたことだった。きっとメンバーは、予め決められていて、必然的に関わらされている。なんて自然な出会い方なのだろう。もしどこか1つでも、すれ違いが生じていたら、今はないのだ。たとえアクアバスの開発担当者の退職が仕組まれていたとしても、成世が別の整備工場を見つけていたら。いや、それならば別のルートで出会うよう仕向けられるのか。
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