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「あ、俺も。国交省所属、平子 大和です。今後ともよろしくお願いします、大将!」
「大和は元気でよろしい!」
「でも大将、敬語にはなっちゃうと思いますけど」
「それはどっちでもいいよ。ほら、これからもよろしくってことで、これサービスね」
カウンターに置かれたハイボールのグラス2つ。宇都宮の朗らかさに救われた大和と成世は、笑顔を取り戻すと改めて乾杯した。
「組織の人間同士って分かったら、俺らなんか変わっちゃうのかな」
率直に成世は不安を漏らした。すると大和は、大袈裟に笑った。
「ハハッ、良い方に変わるんじゃない?これでお互い裏も表も共有できるわけだし、成世のこともっと知りたかったから、俺はすげー良かったと思ってる」
「大和……」
ちょっとジーンとした。そうだ。成世は大和に自分のことを知ってもらいたくて、個人アカウントをフォローしてもらったのだし、直メッセージも欲しがったのだ。
「ヘンテコな機械いじりなんて孤独な任務だと思ってたけど、これからはお前に相談できるんだ。良いことしかないだろ」
「そうだね。俺も、大和に相談するよ」
大和の任務は機械系か。本業と遠からず、なんだな。その方が一本気な大和には合っているのかもしれない。
「成世はネゴシエーターか。コミュニケーションはともかくとして、俺英語全然ダメだから。そこは相談されてもな」
「あはっ、了解」
ふたりの間柄が変わってしまうのかと、一瞬不安になってしまったけれど、そんなのは杞憂に終わりそうだ。やっぱり好きだな、大和のこと。この、包み込んでくれるような心地良さに、いつまでも浸っていたい。そう考えながら、成世は目の前の同僚を見つめていた。
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