第5章

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合理的と言えばそうなのだが、夏帆はほとんど家具を持たない。キャンプ配信で収益を得ているので、家の中でもキャンプ用品で生活しているのだ。時計の置いてあるテーブルは、折り畳み式のキャンプ用のものだし、ベッドではなく寝袋を使っている。床に敷いてあるラグマットも、クルクル巻いて持ち運び、テントの中でも使う。調理用の火を起こすこともできるし、かまども作れるが、さすがに室内では自重しなければならない。故に家電はひと通り揃っている。 余計な物のない部屋は、掃除が簡単で済む。鼻で清潔な空気を確かめてから、夏帆は窓を閉めた。さっき電源を落とした端末を再び立ち上げる。バイト先のカフェまでは、自転車を飛ばして10分もあれば着く。次の任務のための下調べをしておこう。 夏帆はカフェ店員とキャンプ配信で生計を立てている。生計といっても、衣食住で精一杯というわけではなく、趣味のボルダリングに費やす余裕もある。 カフェ店員のバイト料は知れているが、配信の方がかなり大きいのだ。芸能人でもないのに高収入を得られるレベルの配信内容になるとは、始めた当初、夏帆自身も考えてはいなかった。
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