第5章

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海外任務に飛ぶ暇もないという成世に比べると、自分は時間的余裕のある生活をしていると夏帆は思う。任務とは言っても、食料調査をしながらの行った場所での基地設営と炊事なので、趣味のキャンプと大きな違いはない。材料は全て現地調達で、という縛りがある分、普通のキャンパーには務まらないのかもしれないが、慣れればなんでもどうにかなる。 こんな任務に農水省がどう関係しているのか詳細は知らないけれど、食料のことだから農水省なのだろうとざっくり理解している。農水省が名古屋に移転してきたのも、日本の真ん中辺だったからなのだろうと考えているし、そもそも深く考えることは夏帆の性に合わなかった。 『楽しかったな』 『たまには外もいいよね』 『これを外と言うのか』 『この世界では外でしょ』 『だね』 『私たちはこの世界に生きる存在でしかないんだから』 『そうだね』 そう。メタバース空間に生きるゼブラが恋人なのであって、リアルの彼は違うのだ。そこのところ理解できる相手じゃないとね。夏帆は満ち足りた気持ちでゼブラとの接続を切った。
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