第5章

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「さ、リアル夏帆も充電しますかね」 つぶやきながら、スタンドミラーを取り出す。久しぶりのメイクは、ルーティンのそれと違ってワクワクする。いつも指名する男といつもの場所で会う。23時の予約もいつも通り。早い時間は主婦など熟年層の利用が多いと聞いたので、遅めの予約を取ることにしている。合法的な店なので本番はないのだが、元々挿入行為があまり好きではない夏帆は、その必要を全く感じていなかった。 夏帆には妊娠願望もない。普通の女と比べると何かが足りないのだろうけど、そんなのはどうでもいいことだし、自分が満たされていると思っているのならそうなのだ。今の生活は最高だ。自分の満足のためだけに生きていられる。 メイク完了。服装はいつも、黒いワンピースと決めている。出る前にSNSチェックをしておこうと、夏帆は画面を表示させた。通知のバッジを見て、メッセージを開く。相手は少し前の任務で食材を分けてもらったお宅の娘さんだった。
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