第5章

9/14
前へ
/98ページ
次へ
「えー、マジ?トム!トム!めっちゃ可愛いんだけど、どうかな」 納屋で野良猫が子猫を産んだので、もらってくれないかとのメッセージだった。同居人ならぬ同居猫に許可を取ろうと画面を見せる。ナーと大して興味なさげな声を発したトムの額を撫でながら、子猫を見に行く約束を取り付けた。 「あーヤバッ、急がなきゃ!」 足を突っ込んだスニーカーは、黒にシルバーのロゴ入りだ。いつもの無骨なアウトドア用とは違う。キラキラの夜の街は夏帆の主戦場とは真逆だけれど、嫌いなわけではない。人にはそれぞれ必要とされる場所がある。それが無いことに絶望している人間もいるけれど、まだ見つかっていないだけ、それが夏帆の信条。好きな言葉は『適材適所』だ。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加