第1章

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インフルエンサーってやつか。興味無いな。頭の中で呟いてハイボールを煽る。年齢に似合わず、大和はSNSの利用を必要最低限にしている。情報はテレビや新聞から入れているし、コンピュータも車に関係するものはあらかた弄れる。特に不自由は無い。 今でこそこんな感じだが、学生時代の大和は、いわゆる派手な部類の男子だった。夏はサーフィン、冬はスノーボード。運動神経も良く凝り性な方なので、どちらも簡単に腕前を上げた。故に雰囲気イケメンと呼ばれて、それなりに女受けもしていた。ひと通り遊び尽くした末に就職すると、途端に仕事にハマった。以来、人が変わったように流行りものに興味を無くして、現在に至る。  「ミカちゃん、もし会えたら本当に可愛かったかどうか教えてな?最近は映えとか言ってめちゃくちゃ盛るだろ?」 「はいはい、写真映えね」 そのくらいは知っている。インフルエンサーのことはどうでも良い話題だが、明日の仕事は少なからず楽しみだった。移動式水族館なんて、そうそうお目にかかれるものではない。たしかにそうだな。毎日決まった外車の整備ばかりだった日々に比べると、大変さもあるけれど、新鮮で楽しい。
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