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「で、結局あれは恋だったの?」
「恋……だと思う」
「よかったじゃん、気づけて。じゃあもうグイグイ行っちゃってるとか?」
「いや、全然。ハードル高すぎて」
「ハードルって!成世、性格もルックスも言うことないんだから自信持って行っちゃえば?」
「ありがと。でも、そういうわけにも行かないんだよねぇ」
成世は口ごもった。どんな高嶺の花なのだろう。水族館の可愛いすぎるトレーナーとして、知名度のある成世のことだから、華やかな芸能人などと出会いがあってもおかしくはないけれど。
「……夏帆が自分のこと話してくれたのに、俺が黙ってるのはフェアじゃないから、言っちゃおうかな」
「フェアって。そんなの私は気にしないけど」
「いや、違うな。俺が聞いてもらいたい、かな」
「成世のしたいように」
なんだろう。自分にも関係のある相手なのだろうか。気持ちがざわつく。
「うん。やっぱ聞いてくれる?」
「いいよ」
決心したような様子の成世は、画面の向こうで深呼吸した。
「えーと、ハードルその1。……相手は男です」
「……なるほど」
「でも俺、これまで付き合ってきたのは女の子ばっかりなんだよ」
「ナチュラルゲイじゃないってこと?」
「うん。言い訳がましい?」
「別に言い訳なんかしなくていいじゃん。彼が好きです、現在、以上!でしょ」
「夏帆らしいなぁ」
苦笑する成世。私らしいも何も、誰を好きになろうとそれは個人の自由だ。好きになってはいけない人などいない。
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