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「ていうか、それがハードルその1って、それより高いハードルがあるってこと?」
「そう。ここからは夏帆にも関係あるからさ、申し訳ないんだけど」
「申し訳ながんなくていいよ。その2、どうぞ?」
今度は深呼吸ではなくため息が聞こえた。
「……同僚なんだよね」
「職場の?」
「いや、……組織の」
「……マジ?」
「です」
組織。国家の秘密組織のことだ。成世が自分以外のメンバーと繋がっていたことに、夏帆はまず驚いた。
「どこで知り合ったの?」
「本業で。水族館の車両修理を依頼した先の人でさ。意気投合して仕事外でも会うようになって。飲んでた店の大将がまさかの上司」
「上司?組織の?何それ!訳わかんないわね。私たちみたいに似たような活動してて知り合ったみたいなことじゃないのね」
「そうなんだよ。怖くない?全部仕組まれてるみたいでさ」
「確かに怖いわね。まぁ仕組まれてるんだろうけど」
「でしょ?あー俺が恋に落ちるところまで想定内だったらどうしよう!」
国家機関というものは、ありとあらゆる手段を使って見えない力で操ってくる。その結果が可視化された時の驚きを、まさに今体感しているところだった。
「あいつは俺がメンバーで良かったって、今まで通り仲良くしようって言ってくれてるけど……」
「うん」
「もちろんそれは恋愛的な意味じゃないわけで……」
「そうか。それはなかなかのハードルだわ」
共感の相槌を打ち、それから夏帆はこの高すぎるハードル問題の打開策について考え始めた。
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