第6章

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『三原色』のSNSに、珍しくイベントの緊急告知が上げられていた。明日は土曜。臨時入荷したので特選牛串を焼くとのこと。 「牛串祭り!マジかよー」 思わず大和はそう口に出した。すぐに誘いたい相手の顔が思い浮かんだのだけれど、今週末は予定があると、早々に知らされていたのだ。 特選か……あの大将がここまで告知するということは、常連ならば外してはならないイベントだ。店主の正体を知ってからも、大和と成世は度々『三原色』を訪れていた。以前と全く変わらない店主と客の空気感で過ごす時間は、相変わらず居心地がよかった。成世のネゴシエーションを目にしたあの日は夢だったのではないかと、今でも思う。 組織では公安の人間でありながら、あんなに旨い串を焼けるなんて、大将はおそろしく器用で何でもできるタイプなのだろう。土曜以外は、別の店で全く別の顔を晒しているに違いない。 今週末『三原色』に行くことは、大和の中では決定事項だった。成世を誘えないとなると、1人でか。でも、せっかくのイベントだし大将も張り切っていることだろう。久しぶりにあいつを誘うか。大和の指先は、思いついた元同僚の連絡先をスクロールし始めた。
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