第6章

3/8
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「うっま!いつ来ても最高だな」 「いつ来てもって、お前も結構来てんの?そのわりに会わないけど」 「あ?うん。平子は土曜が多いんだろ?俺、月曜休みだからさ、日曜に来ること多くて」 「あ、そうなのか」 ディーラーは月曜休みのところが多いんだったな。ぼんやりと会社員時代を思い出しながら、大和は納得した。 「でも、日曜じゃ大将いないだろ?」 「ああ。それは仕方ないよな。焼きはともかくとして、タレなんかは変わんないし、大将じゃなくてもうまいことはうまいよ?」 焼きが重要なんだけど。そう言いたい気持ちをグッと抑え、大和はふうん、と相槌を打った。 「じゃあ、明日仕事だよな。今日誘ったの、まずかった?」 「いやいや、平子からのお誘いなんてレアだしさ。たまにゃいいって!」 朗らかに笑う男は、ご機嫌で生ビールを煽った。休前日でないのならば、飲ませ過ぎないようにしなければ。  ガラガラと店の引き戸を開ける音がした。レアな牛串祭りとあって、今夜は客入りがすこぶる良い。まだ空席があるんだろうか。そう思いながら、背後で大将が案内する声に耳を傾けた。 「ご予約ですねー。こちらへどうぞ」 予約客か。今夜はそれが正解かもしれない。振り返るのは不躾なので、新規客の着席する気配を感じながら、向かいの連れの顔に目を向けた。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!