第6章

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「あのー」 「はい?」 女性の声に顔をあげる。成世の連れだ。正面からしっかりとその姿を確認した大和は、これが成世の好みかと、無意識に脳内にインプットした。肩までのボブカットは明るめのカラーが施されているものの、ナチュラルに整えられていて、服装も華美ではない。かと言って地味というのも違う。程よく日焼けした肌に、白い歯が映える快活な笑顔。海関係で出会ったのかな。一瞬でそんなことまで頭をよぎってしまう。 「自己紹介、してなかったなと思って。今さらですけど」 「あ、はい」 それならばこちらだってそうだ。林は早々に名乗ったけれど、大和はほとんど口を開いてはいない。 「夏帆です。よろしくお願いします。あ、成世とはただの友人ですので」 「あ、平子といいます。同じく成世の……友人……?」 「あはは。友人の友人は友人ですね、なんて。よろしくお願いします」 夏帆は大和と林それぞれとしっかり目を合わせ、ニッコリと笑い、爽やかな風を残して席に戻った。全くもって好感しか抱けない。口角を無理やり引き上げて作った大和の笑顔は、自然に戻ることはなく、視線を手元に向けても引きつったままそこに張り付いていた。
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