第6章

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言い訳のように付け加えられた『ただの友人』。友人?友人ってなんだ?同じ友人でも夏帆の立場と自分の立場は違う。どんなに親しくしていても、その先のある友人である夏帆に気後れしてしまうのは仕方がない。それに、明らかに気まずそうにしていた成世が、夏帆を『ただの友人』と見ているのかどうかは疑わしい。 こちらを全く見ない成世。何を考えてる?知りたいのに全く読めない。いや、いちばんわからないのは自分自身だ。友人にこんな複雑な感情っておかしいだろ。大和が軽く混乱していると、いつの間にか大将が傍に立っていた。 「伝票。ここ置いとくね」 「あ、はい」 「……あとで」 一瞬リーダーになった大将は、大和にだけ聞こえるように呟いた。あとで来いってこと?なんなんだよ。 「はー食った食った!ごちそうさま。明日もあるし、俺もう撤収しよっかな」 「だな。それがいいな」 空気を読んだらしい林が、まるで出ていない腹をさすり、こちらのテーブルは解散の流れになった。林は財布を取り出して、使う機会のめっきり減ってしまった現金を並べる。割り勘で良いよな、端数は誘ってくれたお礼に取っといて。と、立ち上がりながら大和の肩を叩いた。
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