第6章

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***** 自営業でよかった。『臨時休業』の貼り紙を準備しながら、大和は左のこめかみを指で押さえた。ここまで酷い二日酔いなんて、何年ぶりだろう。遊び人を気取っていた大学時代以来かもしれない。表に貼り紙をして、シンとした店内に戻る。従業員を雇用していないことも、ラッキーだった。水の入ったペットボトルをそばに置き、ガレージの事務所内に置いてあるソファに横になる。 明かされた怒涛のような事実を飲み込むため、酒で流し込んでいたらこの有様だ。なんてことだ。日曜日の水族館を欠勤するわけにいかない成世は、大丈夫だったのだろうか。これまで2人で飲んだときの彼は、アルコールにはそれなりに強そうだった。昨晩は陽気な夏帆につられて、間違いなくいつもより成世の酒量も多かった。グラスの空きそうで空かない絶妙なタイミングで、大将が「飲むでしょ?」と持ってきてくれるので、皆止められなかったのだ。 どんな話題でどんな会話をしたのか、細かく思い出せない。 処理しなければならない情報が多すぎて、あの席では上の空だった気もする。頭は痛いけれど、せっかく仕事を休むのだから、いろいろ整理しておこう。大和は肝機能に喝を入れるサプリメントを摂取し、順を追って記憶を辿ることにした。
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