第6章

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元同僚の林が帰った後、大将もといリーダーの宇都宮は、いつのまにか人払いをして、大和の加わったテーブルに合流した。スムーズに客を帰らせる店主とかどうなんだろうと思うけれど、さすが組織のリーダーの手腕だとも言える。頼んでもないのにテーブルにさりげなく伝票を持ってきた宇都宮の様子を、大和は思い出していた。 宇都宮は、成世が同僚だと判明した夜と同じように、乾杯の音頭を取った。直後、思考が右往左往している大和を置き去りに、夏帆もまた同僚であることが知らされたのだった。 見た目どおり屋外での活動が多い夏帆の任務は、僻地での陣営設営とのこと。普段から海外に飛んで経験を積んでいる彼女は「山でも砂漠でもジャングルでもキャンプを張れる」のだとか。海外経験が豊富ということから、成世と同じく言語が堪能なのだろうことも、容易に想像できる。 「友人の友人は友人って言ったけど、私たちみんなチームメンバーだから、友人以上だね!」 夏帆は快活にそう言い放ち、ビールジョッキを煽った。アルコール耐性は相当ありそうだ。しかも、よく食べてよく笑う。ようやく酔いがまわり始めたのも相まって、夏帆の口から出た『ただの友人』が『友人以上』に進化したことで、大和の気分は上昇に向かった。
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