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「でか……」
思わず声に出てしまうくらい、スケールの大きな車だった。トラックのコンテナ部分がガラス張りの水槽になっているものだと勝手に想像していた大和は、その意外な形態に驚いていた。ざっくり言うと、バスでありながら、巨大なキャンピングカー。車両の中に入って歩きながら水槽を観覧できる、本格的な仕様の水族館だ。
「このバス、特注なんですよー。世界に一台しかないんです」
背後からの声に、慌てて振り返る。職員証を首から提げた、スカイブルーのツナギにゴム長靴姿の小柄な男が、ニコニコしながら立っていた。
「あ、申し遅れました!『名洋アクアバス』担当の三ヶ島です。今回はお話を受けていただいてありがとうございました」
「平子です。ご期待に添えるかどうか分かりませんが、よろしくお願いします」
サッと名刺を交換すると、大和は手元に目を走らせた。珍しい名前だったので、聞き間違えてはいけないと思ったのだ。漢字の下にアルファベットでMIKAJIMA NARUSEとある。三ヶ島 成世か。特に肩書きは付いていない。
名刺から本人に視線を移動させる。見たところ20代前半かな。艶のある栗色のマッシュルームカットに、色白の肌。童顔な上に小柄なので、少年に見えなくもない。若いのに施設の売りである移動式水族館の責任者ということは、よほど仕事ができる人物に違いない。
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