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「おはようございます!」
キッチンの扉を開けると、もわっと熱気に襲われた。裏腹に、空気は凜と張りつめ、静まり返っている。調理場はすでに臨戦態勢だ。
「お、珍しいねぇ。最近毎日じゃないか」
「何言ってるんですか。シェフが明日も来い、毎日来いって言ったんじゃないですか」
「言ったけど、水着でって条件も付けたはずだぞ」
「またまたぁ。いるだけで嬉しい癖に」
「しょうがねえだろ。久坂とばっかり顔合わせてたら気が滅入っちまう。今日も忙しくなりそうだから、よろしくな」
軽口を叩けるぐらいには、高杉シェフの気分は上々っぽい。あまり私に対して怒りの矛先が向けられる事はないにせよ、機嫌は良いに限る。
「おはよう。早かったな」
声を聞きつけたのか、陽君がホールから顔を出した。
「環境工学の授業、レポートだけだったからさ。……マネージャーは?」
「今カウンターやってる。今日六時と七時、七時半から予約四件な。一組はアジア生命さんのグループ。後は新規。ママさんグループとカップル」
早速陽君と打ち合わせを始めると、
「今日は陽と乃愛ちゃんの二人?」
と副料理長の悟さんが確認してきた。
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