乃愛

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「はい。あとはマネージャーと、三人体制です」 「じゃあ大丈夫だな」  苦笑する悟さんに、私と陽君も顔を見合わせ、苦笑い。  平日のディナーに入ってくれていた恵美さんが辞めたのは、つい先日の事だった。  恵美さんは駅前の飲み屋とかけもちしているフリーターで、サービス業はお手の物なんだけど、どうしてもふとした時に、夜の仕事特有の馴れ馴れしさというか、粗さが目立つ人だった。  それはそれで恵美さんの個性としてホールマネージャーの彼も大目に見ていたのだけど、どうしてもシェフとはソリが合わなかった。 「あいつよぉ、俺の作った料理を「はぁい、持って行きまぁす」なんてチャラチャラ持って行くんだよな。アンティパストを「アンディ」なんて外人みたいに呼ぶしよ。化粧も香水もぷんぷん臭いし。ウチみたいなレストランには、ああいう品の無いお姉ちゃんは似合わないと思うんだよ」  シェフは事ある度にそう繰り返した。職人肌な人なので、一度気になると容赦も遠慮もしない。客あしらいには慣れていると見えてそれとなく受け流していた恵美さんも、先日ネイルの件でシェフと口論になり、辞めてしまった。
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