プロローグ

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プロローグ

 彼は、つけない。  いつだってそうだ。初めてこの関係が始まった時から、一度たりともつけたことはない。  剥き出しのまま、彼自身そのままの状態で、私の中に入って来る。  決して広くはないステーションワゴンの中で、彼はとっても優しく、且つ激しく私を求める。  時に注意深く周囲に視線を走らせながら、色んな体勢で私の身体を蹂躙する。  思えば一番最初、始まりの段階でつけずに突っ走ってしまったのが失敗だったのかもしれない。あの時は成り行きでそうなってしまって、あらかじめ準備しておく事なんて出来なかった。つけないままに始まってしまった以上、今更つけてなどと言い出せば自分の気持ちが冷めていると思われかねない。なんで? どうして? なんて質問でも飛び出せば藪蛇だ。 「中で……出してもいいかな?」  眉根を寄せ、呻くように彼は言う。  私を見下ろす強い眼差しは、最初から断られる事なんて想定していない。 「……うん」  私の返答に満足したように、彼の動きが激しさを増す。  けれど彼は、結局中には出さない。  ちゃんと寸前であたしの中からそれを引き抜いて、お腹のあたりに溜まったものをぶちまける。  温かな彼の体液を腹部に感じた瞬間、あたしの心の中には安堵と、ほんのちょっとの失望が生まれる。  やっぱり、中には出さないんだ。
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