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笛を口にあて、息を吹き込む。
ぷうううううう。ん?もう一度。ぷうううううう。んん?あれ、このパターンもしや……。
「Aボタン連打ねええええ!曲奏でられないいいいい」
叫びにイグニスは驚いて、駆け寄ってくる。
「大丈夫?ゲーマー」
「むりい……」
「Aボタンって何?」
イグニスはポカンとしていた。しかし、そうこうしているうちにクリア後のワープでダンジョンの入り口に戻り、街の人々が出迎えてくれる。
「ありがとう!勇者様!」
喜びに満ちた言葉の数々にイグニスは困惑しながらも、笑顔で返す。そして私は言った。最初の頃とは違い、勇者スマイルも板についてきたな。
「これ、ぜーんぶおまえ宛の賞賛」
そんな言葉に、イグニスは笑ったのだった。
***
それからというものの、各地の街で問題を解決、つまりイベントをこなしていき、人々からの信頼を集めるイグニス。
あの情けなくも泣いていた男が立派になって……と親目線になるが、何回もその背中を見てきてるのだから感慨深くなっても仕方がない。周回プレイのために夜通しやってたな、なんて思い出に耽る。
「なぁ、イグニス」
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