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イグニスは、ふと、こちらを見てきた。その眼差しは凛としていて、今までの頼りなさは微塵も感じさせない。
「でも、オレは勇者で良かったと思うよ。きみが喜んでくれるから」
穏やかな笑みを見せるイグニスに目を見開く。なにそのSSRスチルと驚いてしまったのは許して欲しい。
だってあんな、へなちょこスマイルしか見ていなかったから……って、ん?待てよ?ゲームだとこのイベントなかったような……?
「ゲーマー?」
「……っあ、ああ、いやなんでもねえわ」
そうだ。ゲームではこんなイベントはなかったはず。そもそも、こんな風に語るシーンすらない。いつもイグニス視点で見てきた世界には、戦うか、NPCに感謝されるか。
イグニスが誰かに主体的に関わることなんてサブクエとかくらい?メインはボス退治だし。とにもかくにも、イグニスの変化は喜ばしいはず。ゲーム的には。
「イグニス」
「ん?」
「おまえ、変わったな」
そう告げると、イグニスは嬉しそうに笑った。その笑顔は、ゲームでみたどのスチルよりも綺麗だった。
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