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「イグニス、おまえを救ってやる。だから、こんな奴らのためじゃなくて、私のために戦え」
私のリアルゲームライフのために、とは言わなかった。
しかし、気持ちは嘘じゃない。あんな推しの姿みてられないから。
扉がそっと開く。そこにあるのは眉を下げて、情けない顔をした勇者がいた。
「っっ……ぁ、りがとぉ」
ああ、生声だ。やっぱりいい声だなと感慨深くなりながら、イグニスの手を引き駆け出した。
***
場所は移り変わり、何故か森の中で魔物に囲まれていた。
「なんでだよっ!!」
なんでやねん。そう叫びたくなるのは仕方ないと思うのだ。
イグニスを連れて森にきて、魔物を倒そうとしたが、ボコボコにされ逃げ惑うハメになった。
いや、おかしいだろ!この勇者弱すぎ!このゲームLevelじゃなくてPSの方だから、最初からラスボスとかも実力次第では挑めるゲームよ?
「おい!なんでそんなに戦えねぇんだ!」
「オレ戦ったことなんか、ないっ」
「ふざけんな!その腰の剣は飾りか!?振れ!とにかくやれ!」
黄色い声援ならぬ怒号。
よく迷っているやつに背中を押すとかいうが、最早背中を蹴飛ばす勢いだ。
そんなんでも、やるしかないと思ったのか知らないが、というかさっさとやれなのだが。
イグニスが剣を構える。そして、魔物を切りつけるもダメージは0だ。
「っ」
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