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こんなん勝てるわけないだろおがああああ!! なんとか隙を見て這い出てきたイグニスを連れて逃げ惑い、魔物の縄張りから逃げ出した。
ぜーはーっと息を荒げながらイグニスを見る。泣きつかれたのか目の下に涙の跡があるし、髪も乱れていた。しかし、この程度でへこたれているようでは困るのだ。もっとやれ!と言葉をかけるとイグニスが言う。
「……むりだよぉ」
「ああん?無理じゃねぇだろ。あんな重い剣ブンブンしやがって……ん?」
そこで気づく。そうだ、イグニスはこの重い剣を軽々と振り、自力で魔物を押し退け、泣きながらも足は速い。体力まである。
「おい、ちょっとこれ持て」
試しに渡してみたのは石。イグニスは不思議そうにするが「投げろ」と顎で示した。すると、イグニスの投げたそれは木を抉るように突き刺さる。
あんな何の変哲もない石ころが!
「なぁんだ、スペック健在じゃん」
「え、と……?」
「おまえは十分強いってこと。まあ、後はしっかり技が出せれば……」
その時、辺りがざわつく。魔物だ。
再び飛び出してきた先程のトカゲ。怯むイグニスに剣を構えるよう伝える。
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