岩崎信二

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 見当を付けていたアパートの前にあるコンビニの店内で見張っていると、夕方、三津橋が帰ってきた。SNSの写真を見ていたので、すぐに本人だとわかった。  その日は三津橋がアパート一階の奥から二番目の部屋に入るのを確認しただけで帰った。 (あいつのせいで……)  (はらわた)が煮えくり返る思いだった。  三津橋の投稿のせいで、春香を埋めた現場が心霊スポットとして有名になってしまった。  毎日、春香が眠る土の上を、恐いもの見たさの若者達が歩いているかと思うと気が気ではない。 (あいつらの誰かが春香の死体を発見したら……)  そう思うだけで居ても立ってもいられなかった。 (土の状態は大丈夫か? もう少し深く埋めればよかったか?)  不安が尽きない。 (死体が腐乱して穴がへこんだら、すぐにバレてしまうのではないか?)  しかし、「犯人は現場に戻る」とはよく言ったものだ。心配になって現場に戻って、それで疑われては元も子もない。  信二は不安を抑え、あの場所へ行くのを我慢していた。  日を改めて、信二は一日かけて三津橋を尾行してみた。  朝、部屋を出て大学へ行き、授業が終わると帰りにバイトして部屋に戻る──。ごく普通の大学生の生活だ。警察に接触するような怪しい様子はなかった。  ところがその日、三津橋が部屋に入るのを見届けて帰ろうと、コンビニの駐車場で煙草を吸ってる風を装い立っていると、突然三津橋が信二の方を振り返った。  通りを隔てて遠いのでよくは見えなかったが、しかしなんとなく目が合った気がした。  すると三津橋は信二に向かってにやっと笑った。いや、笑ったように見えた。 (あいつ、どういうことだ?)  信二は驚愕した。  三津橋は尾行されていたのをお見通しだったのだ。そして、信二がなんで尾行していたのかも──? (やはりあいつは、俺の犯行を知っている!)  信二はなんとかしなければと、焦る気持ちを抑えてその場をそそくさとあとにした。
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