大倉純也

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大倉純也

 まだ慣れない社会人生活。終業時間になると緊張の糸が切れ、どっと疲れが出る。大倉純也(おおくらじゅんや)は上司や先輩に挨拶をして会社を出た。  役に立たない新人はさっさと帰れとばかり、定時上がりにしてもらえるのはありがたかった。 (これで残業が加わったら社畜まっしぐらだな……)  死んだ魚のような目をして挨拶を返してくれた先輩達を、純也は思い返してぼやいた。  純也は西波大学経済学部を卒業して、この春市内のIT関連企業に就職したばかりの社会人一年生だ。出身は隣町なのだが、大学時代からこの市で一人暮らしをしていた。  駅前のバス停へ歩きながら、ポケットのスマホを取り出しSNSを開く。エイプリルフール以来の習慣になっていた。  エイプリルフールにあの投稿があって以来、周のアカウントは静かなままだった。  たくさんのコメントや引用、リプライへも、なんの返信もなかった。それでも、また何か投稿があるのではとつい毎日確認してしまうのだ。  周とは同じ町出身、高校からの親友だった。  あの周のアカウントの投稿以来、それまでなんの噂もなかった井筒トンネルの林が心霊スポット化した。  昨日は動画投稿サイトの人気オカルト配信者が、わざわざ東京から撮影に来ていたらしい。  純也の兄は地元町役場に勤めているが、役場内では少子化対策として、夏に心霊スポットでの婚活イベントをやろうかと半分冗談、半分本気で話しているらしい。  純也自身もあの投稿を見て、四月の最初の休みに高校の仲間と現場へ行ってみた。やはりSNSを見て来たらしい若者グループが何組かいて、写真や動画を撮っていた。  しかし別に何も起きなかったし、周の姿があるはずもなかった。  純也が周のことを考えながらアパートに帰ると、部屋の前にスーツ姿の男が二人立っていた。
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