1章 7 令嬢のたどった末路と今後のこと

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1章 7 令嬢のたどった末路と今後のこと

  ――まるで逃げるように、マルケロフ家の屋敷を出た後。 御者のジャンにお願いして、私達は一番近い街を目指して夜道を馬車で走っていた。 ガラガラと夜道を走り続ける馬車の中で、ニーナがため息をついている。 「はぁ……旦那さまと、ベネディクト様……全くお話にもなりませんでしたね。まさか、あんなに激怒されていたなんて」 「確かにね。おおよそ見当はついていたけど、あそこまでとは思わなかったわ。まさか妹に毒を手渡していたなんて……」 思い出すだけで恐ろしい。両肩を抱えて身震いした。 そこで自分がこの世界で目覚めたときのことを思い出してみる。 私は城の外で倒れていた。 起き上がった途端、咳き込んで血を吐いた。そして足元に転がる怪しい小瓶……。 ここまでくれば、もう明白だ。 リアンナは城に到着し、自分が完全に王妃候補から外れたことを悟ってしまった。 恐らく彼女は兄から次期王妃になれなかった場合は死を選べとでも言われて毒薬を渡されていたのだろう。 周囲からの蔑み、非難……自分を必要としない家族に失望したリアンナは城の中庭で服毒自殺を試み……1人で寂しく死んでいった―― なんて気の毒な話だろう。 毒を飲んだリアンナは死に、何故かトラックに轢かれて死んだ私がリアンナの身体で目覚めてしまった……のだろう、多分。 何故こんなことになってしまったのかは謎だが、分かっていることはただ一つ。 私はこの先、リアンナとしてずっと生きていかなければならないということだ。 しかも侯爵令嬢でありながら、一文無しで家を追い出されるという洒落にならない状況で……。 「リアンナ様……これからどういたしましょうか?」 ニーナが今にも泣きそうな顔で尋ねてきた。 「そうね……。でもその前に謝らせてちょうだい。私のせいでニーナとジャンを巻き込んでしまって本当にごめんなさい」 「そんな、リアンナ様のせいではありませんよ」 ニーナが慌てたように首を振る。 「だけど私についてきさえしなければ、住む場所も仕事も失わずに済んだでしょう?」 「いいんですよ。だって私はリアンナ様の専属メイドであり、幼馴染なのですから」 「……ありがとう。だったら、今度からは私が直接ニーナとジャンを雇用することにするわ」 「え? どうやって私とジャンを雇用すると言うのですか? だいたいリアンナ様は侯爵令嬢で、今まで一度も働いたことすらありません。収入を得る方法をご存知ありませんよね? 生活のことならご安心ください。リアンナ様だけでも、屋根の下で暮らせるように私とジャンで何とかいたしますから」 先程まで涙目だったニーナは私のために気丈に振る舞ってくれている。 だけど、私は本物のリアンナではない。 中身は25歳の日本人女性で、元OL。 それに、私にはとっておきの特技があるのだ。それを活かせば……きっとお金を稼げるはず。 「大丈夫よ、ニーナ。私に任せて。あなたとジャンの面倒くらい、見てあげるから。とりあえず町に着いたら考えましょう」 「リアンナ様……。分かりました、とりあえず今後のことは町に着いてから考えましょう」 ニーナは少しだけ安心できたのか、笑顔を見せた――
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