0人が本棚に入れています
本棚に追加
2020年4月
高校を卒業して5年経った。
今年のエイプリルフールも、彰人に嘘をつこうと思って
電話で呼び出そうとした。
ここ数ヶ月、忙しくて彰人と連絡を取れていなかったから
すぐ出てくれるだろうと、連絡先から通話ボタンを押す。
しかし、いくら待っても彰人が電話に出ることはなかった。
あれ、おかしいな、とメッセージを何回か送ってみる。
すると、彰人から電話がかかってきた。
「あ、もしもし?何だよお前、電話出ろよ〜!!」
[.......春瀬彰人さんの親族の方ですか?]
「え、?いや、えっと、と、友達、っす、?」
[現在、春瀬さんは〇〇総合病院にて入院中でございまして....。]
「......今行きます、!!」
何でだ。
そんなこと、聞いてねぇってのに。
「彰人、!!!」
『......!!よ、よぉ、久しぶり、』
「ど、どうしたんだよお前、事故か、?いや、病気、か、」
『っはは、大したことねぇさ、笑』
前に見たときよりもずいぶん痩せ細っている。
「お前、っその、何だ、もうすぐ、死にそうな感じ、するけどさ、」
『っんふ、何言ってんだよ、俺がこんな早く死ぬと思うか?笑』
「だって、じゃ、じゃあ、何でそんな痩せてんだよ、」
『大丈夫だよ。死なねぇから、安心しろ。』
「.......そうか、」
『まぁ、ちょっとゆっくりしてけよ。どうせあれだろ?嘘つきに来たんだ、笑』
「もうそれどころじゃねぇって.....。」
『あはっ、だよなぁ、笑』
喋り方も仕草も何一つ変わっていないのに、
頬は痩けて腕は骨しか無いんじゃないかってくらい細い。
本当に、死なないと良いけど。
「じゃあ、帰るぜ。邪魔したな。」
『.......なぁ、』
「ん?」
『俺も、一回はお前に嘘ついてみたいと思ってなァ。』
「急だな、笑」
「良いぞ、一個聞いてやるよ。」
『ううん、良いんだ。もうつけたから、』
「はぁ?いつだよ。あ、もしかして、この病院に入院してるって事自体嘘かァ?!」
『それは残念ながら、ホントだ。笑』
「っ、そ、そうか....、ま、付けてよかったな。んじゃ、次会った時にでもネタバラシしてくれ。」
『今はダメなのか?笑』
「お前と会う約束を取り付けてぇんだ!!んじゃあな、今度は果物でも持ってくるよ。」
『......あぁ、お前は、俺みたいになるんじゃねぇぞ〜。』
「分かってるわ!!」
少々乱暴にドアを閉めてみる。
果たして、アイツがついた嘘はどんなものなんだろうか。
その嘘は、アイツの口から告げられることはなく、
行動で俺にネタバラシをしてくることになった。
「死んだ?彰人が?」
[はい、昨夜、午後8時に、息を引き取られました。]
_________
『大丈夫だよ。死なねぇから、安心しろ。』
_________
最後につきたかった嘘がこれかよ。
脱力感が俺を襲う。
そのまま机に突っ伏して、寝てしまった。
最初のコメントを投稿しよう!