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「……へえ、やっぱ分かってんじゃん」
そう伝えると、ありありと嗜虐の笑みを浮かべる若い女。……そりゃ、分かるよ。そもそも、それ以外――私の命を奪う以外に、クリフを人質に取る理由なんてないはずだし。
……ただ、それにしたって、よもやクリフを人質にとろうなんて人間がいようとは。もちろん、私への脅しという点ではこれ以上もない適任だけど……それでも、さながら聖人の如く誰に対しても隔てなく愛を注ぐクリフに対し、よもやこんな……いや、むしろそういう聖人が気に食わない人間も一定数いるのだろう。
すると、私の抵抗しない姿勢を見て取ってかゆっくりと私を取り囲む五人の男女。そして、その中の一人が徐に棍棒を振りかぶり――
……うん、これで良い。ほんとに気に食わないとしても、別に恨みがあるわけでもないだろう。だから、ここで私が大人しく命を渡せば、彼は解放されるは――
「――――エマ!」
「………………え」
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