最期は、貴方の手で――

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「…………エマ」  再度、ポツリと私の名を呟くクリフ。なおも、その透き通る瞳には耐え難いほどの悲痛がありありと揺れている。……ほんと、優しいなあクリフは。だけど――   「……どうか、そんな悲しい表情(かお)しないで。私は、元よりこういう運命……それでも、他でもない貴方の手で死ねるのなら、これ以上もなく本望なんだから」 「……っ!! ……そんな、こと……」  そう、微笑み告げる私。人間の命を奪った悪魔は磔とされ、その命を以て贖う――ここまでは、さっき話したと思う。そして、その役目――その悪しき命を絶つ役目を担うのが、この村において最も人望の厚い聖職者……つまりは、クリフの役目ということになるわけで。  ともあれ――努めて明るくそう伝えるも逆効果だったのか、いっそう苦痛に顔を歪めるクリフ。……あーあ、折角の美貌が台無しだよ。まあ、そんな顔も素敵なんだけど。  ――でも、別に嘘じゃない。むしろ、紛うことなく本音と言って良い。だって……きっと、ずっと待っていたから。こうして、彼の――他ならぬクリフの手でこの悪しき命を終えられることを、ずっと待ち焦がれていたから。
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